子育ての準備や心構え

こどもの成長を最善にするための3つのポイント(2019年)
三浦理恵  

 

【プロフィール】
カウンセラー、教育コンサルタント。発達交流分析トレイナー。
Active Parenting Consultancy 代表。長年海外で邦人向けメンタルへルスサービスを提供。
エリックバーン著「こんにちは、の後にあなたは何と言いますか?」(星和書店)共訳。
現在シンガポール日本人学校勤務。上智大卒、NYコロンビア大学修士。

 

 海外在住邦人家庭、様々な教育現場で子供達と接してきました。その間、特別な支援を要する 子どもたちを取り巻く環境にも大きな変化がありました。  
現在住むシンガポールは、幼稚園から高校まで、子どもの教育についての選択枠も多いことで 知られています。日本人学校はもとより、アメリカ系、イギリス系、その他のヨーロッパ系、また 最近では中華系など、インターナショナルスクールも多種多様、その選択には大きく悩むところです。様々な教育の機会があるので、同じ国の中でさえともすると子どもの教育環境が大きく変わることもあるようです。変化はチャレンジ、成長の時、とも言いますが、それには周りの準備と 協力が不可欠です。

1 教育の「一貫性」を意識する。

 転勤、転校はやむを得ない場合もあります。また、新天地を求めて移動を希望する場合もあるでしょう。どちらの場合においても親御さんの「我が子の現段階での成長を把握し、それを 次の教育現場へつなげていこう」という姿勢が大切です。
お子さんに特別な配慮が必要なのではないかとお考えの場合は、可能であれば現在お住まいの地域の教育、専門機関でご相談の上、その結果を次の学校に持っていきましょう。どのような支援が一番良いのかを協議するための重要な資料となります。
それは単に「特別支援部が妥当なのか、そうではないのか」ということに留まりません。「行先の学校ではどのような支援が可能であるのか」を理解し、親ごさん自身が我が子の成長、将来に「どんな事を考えているのか」「何を目指すのか」を説明する準備をするのにも役立ちます。  
その内容は学力的な事かもしれませんし、社会性の成長についてのことかもしれません。お子さんの現状を踏まえた上で、今後の成長に「このようなことを期待している」という目標を持ち、 それを言葉にし、学校と共有しましょう。そこで初めて教育現場と家庭との繋がりに一貫性が生まれるのです。  
これは次の移動にも大きく役に立ちます。我が子に最適な教育環境は?を前の過程で十分認識しているので、次の選択もスムーズになるでしょう。子の特性を認識し、それにあった教育方針を持った学校を選ぶように心がけ、教育の「一貫性」を心がけましょう。   

2 親は「運転席」に座り続ける。    

保護者の方は時として、特に何らかの障害が確認され、診断がついた時に、「専門家」ではな いから、という理由で、主導権を専門家の先生に譲ってしまうことがあるように思われます。車の運転に例えるならば、運転席から補助席に移動する、とでも言いましょうか。  
確かに障害の研究、理解においては専門家には知識と技術があるかもしれません。しかし、我が子の事を一番理解しているのは、子どもの誕生から入学まで日夜世話をしてきた親であり、子の弱点や強みを本当の意味でわかっているのも親です。にも関わらず、運転席から補助席に移ってしまう親御さんが多いのはとても残念な事です。  
一日数時間という限られた中で学校の先生たちが気づける範囲は限られています。日々、何人もの子どもを指導する先生方には気づきにくい、我が子の長所、「できる」、と思う事は進んで先生と共有してはいかがでしょうか。そうすることでその子の「教育目標」も明確になり、共通の目標に向かって家庭と学校の両方から働きかけることが出来るようになります。そこに家庭と学校との間につながりが築かれます。    
「教育は学校のこと」と丸投げにせず、我が子についての知識、理解を子の成長のために学校の先生と共有してください。その交流によって先生はお子さんについて多くのことを学び、より効果的にお子さんの発達をサポートすることができるようになります。お子さんの学びをより良いものにしていくために、お子さんが仮免を取得するまで運転席にいるのは保護者の方であることをどうぞお忘れなく。

3 子どもの「成長したい能力」を信じる。

 例えば、シンガポール日本人学校では、通常は1年生から現地の先生による英語の授業がカリキュラムの中に入っています。特別支援、通級の子どもたちについては個々の特性、状況により現地の先生か、特別支援の日本人の先生のクラスで行うかが決まります。国語の内容が学年相応に達していないお子さんであっても現地のネイティブの先生のクラスにいくこともあります。例えばそれは、ご家庭がその後も帰国せずに、お子さんが海外の現地校にいく可能性が高い、という理由等による場合です。  
英語教育については国内の普通校においてもその是非はあり、あるいは特別支援部においては 二の次、という考えもあるかもしれません。しかしながら、障害を持つお子さんと共に海外で生活をし続ける、という場合であれば現実に子ども自身が少しでも英語を理解し、他人とコミュニケートする能力は必要でしょう。子どもへの英語教育を望む理由があり、それをサポートする意思を持っている場合は、子ども自身にもそれを説明しましょう。そして、それを学校の先生とも共有します。そこで初めて、本人の英語の学びにも大切な意味が出てきます。  
親は目標を示し、学校はできる支援を提供します。そのような環境が整うと、子ども本人も頑張れるようになれるのです。実際にそのような例をいくつも目にしてきました。きちんと目標を示されたお子さんは、本人の学ぶ意志も高められます。そこでの子どもの成長には目をみはるものがあり、誰もが予期しなかったところまで到達することさえあるのです。  
これは英語教育についてのみではなく、他の学習分野、あるいは社会性についての学びについても言えることです。現実をしっかりと見つつ、子どもの成長の可能性に制限をつけないこと、 それが何よりも大切なことです。決して簡単なことではありませんが、親の現実的期待、教育機関の学習指導と支援、本人の意思がうまく作用すると思いもよらぬ成長を目にすることになります。親も先生も本人も、皆同様にそれぞれ大切な役目を担っているのです。

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